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原作:小池真理子

1952(昭和27)年、東京生れ。成蹊大学文学部卒業。1996(平成8)年『恋』で直木賞1998年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、『無花果の森』で2011年度芸術選奨文部科学大臣賞、2013年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞した。代表的な長編作品に『狂王の庭』『虚無のオペラ』『瑠璃の海』『望みは何と訊かれたら』『ストロベリー・フィールズ』がある一方、短編の名手としても知られ、『水無月の墓』『夜の寝覚め』『雪ひらく』『玉虫と十一の掌篇小説』『Kiss』といった短編集も多数発表している。また、エッセイ集に『闇夜の国から二人で舟を出す』などがある。なお、小池作品の映画化は、『無伴奏』を含め「恋三部作」と称される『欲望』が2005年に公開されており、2016年には『二重生活』の公開も予定されている。

Comment コメント

『無伴奏』は、作者自身の高校時代を描いた作品です。時は1960年代の終わりころ。当時、仙台で高校生活を送っていた私の、これはまさに、永遠に色あせない思春期の記録でもあります。
学園紛争があり、反戦フォーク集会があり、音楽、映画、文学、演劇など、すべてのサブカルチャーが一斉に塗り替えられて、学生たちの誰もがじっとしていられなかった時代でした。タイトルの『無伴奏』というのは、当時、仙台に実在したバロック喫茶の名前です。多くの若者たちがバロック音楽を聴きながら本を読み、思索にふけり、議論をし、幾多の恋が生まれたり消えたりしていました。
その、貴重な思春期の想いが詰まっている店を舞台にして小説を書いてから、すでに25年の歳月が流れました。矢崎仁司監督からの熱心な映像化の依頼があったのは、2010年。喜んでお受けしたものの、翌年には東日本大震災が起こります。中断に次ぐ中断を繰り返し、長い時間をかけながらも、しかし、監督の、この作品に向けた強い愛情はつゆほども揺るがずにいて、このたび映画は完成の運びとなりました。
試写を観ながら、私は客席で胸熱くし、自分自身のあの時代を思い返していました。時代背景の何もかもが、繊細に丁寧に描かれていて、私自身がスクリーンの中のどこかに隠れ、あの時代を生き直しているような感覚を味わいました。
矢崎監督と私は同世代。監督と原作者の、あの時代に向けた特別の想いが混ざり合って、またとない化学変化を起こしたのかもしれません。「無伴奏」の店内も完璧に再現されました。俳優さんたちの、役になりきった瑞々しい演技。近年稀れにみる映像美の数々。どれをとりあげても、この映画にかかわったすべての方々の無垢な情熱が感じられます。
多くの方々にご覧いただきたいと切に願っています。

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(C)2015「無伴奏」製作委員会